小鹿太郎の日記

パワハラによる休職中のこととか、あんなこととかこんなこととか。

光射す方を

お久しぶりですね。元気にされてましたか?

実は、ほぼ1年続いた私の人生の夏休み、略して無職期間も、後10日ほどで終わるのです。

 

先日、年上ながら私の元部下であった女性とお茶をしました。

その際、元職場の現状をざっと聞いたので簡単にお伝えしましょう。

まず、元部下である女性、彼女もまた、私が休職し始めてすぐに、私という盾を失くしたため、クズ上司のパワハラを直に受けるようになり、今年の春、私と同じく、その職場を去りました。

そのせいもあってか、私たちにパワハラをし続けたそのクズ上司は、あらゆる手段を使って居座り続けた居心地の良い部署から、全く経験のない他部署へピョーンと飛ばされたそうです。

そして、私が働くこととなる新しい職場で、私と元部下の女性は再び一緒に働けるようになりました。

思い返す度、頭重感に襲われて、うまく文章に起こすことができないけれど、まあ、そういった感じです。

この1年、たくさん悩んだし、たくさん泣いた気がするんですけど、今となっては、旅先の風景とか、友達と語り合った、その後ろに広がっていた美しい夕暮れとか、そういうことしか思い出せないのです。

 

そうして、いつだって、光射す方を見上げながら、これからも私は生きてゆくんだと思います。

 

これで、私のパワハラ被害、その後、の話はおしまいです。

また、今度は、ずっと楽しい話題で、戻ってこれたら良いな。

それでは、また!

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これが一生分の運かあ・・・

前回した話、覚えてらっしゃいますか?

一人暮らしをする私の部屋に、PCの設定変更工事のため、清潔という名の着ぐるみを着た小汚いおじさんがやってくる、というやつです。

工事を請け負った先の方は、私のおかしな願いを聞き入れてくれ、マスクと清潔な手袋と清潔な靴下と、新品のスリッパまで持参して来てくれました。

チャイムが鳴って玄関を開けたらおじさんが?

ーいいえ、ここからは、もう、お伽噺ですね。

目が瞑れるほどの煌めきを放つ美青年が、だったのです。

 

もう(ーあれ?これは夢かな?日頃、私が妄想する中でも、最大級の夢かな?)って思いましたよね。

180cm超えでスタイル抜群の美青年です。「遅れてすいませんでした」と微笑んだ際に黒水晶みたいな煌めきを放つ瞳、マスクをしててもわかる、すっと通った鼻筋と美しい肌質・・・もうね、「あれ、夢と魔法の王国って、ウチだったのかな?」ですよ。確かにミッ〇ーぽいの、ウチにいますからね、ハムスターですけど。

 

もう、猛烈に後悔しましたね、『何故、マスク・手袋・靴下着用を強いたのか!!』と。天使様が我が部屋にご降臨されたというのに、なんてもったいない!!と。

しかし、ここで、「あ、マスクとかもういいんで・・・」とか言ってしまったら、モテ慣れた美青年に(え?それって僕が美形だから?ーハッ、これだから女ってやつは・・・)て呆れられること必至、断腸の思いで、潔癖キャラを貫きました。

言葉少なめで、丁寧に、てきぱきと作業を続ける美青年の背中をうっとりと見つめながら、私は、手を伸ばせばつかめるんじゃないか、ってほどはっきりと、その姿を見ました、一生分の運、ってやつを。

 

・・・無駄遣いしたよねー!!

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 「10年」 間。

10年間、一人暮らししているんですけど、部屋に人を入れるのが嫌なんですよね。

家族?いいでしょう。女友達?いいでしょう。

男友達?煙草吸う子・清潔感のない子はダメです。

恋人?ん?んー・・・まあ、いいでしょう。

ガスの点検?トイレのトラブル8,000円?ムーリですムリ、本当にイヤ。

 

以前、ガスの点検で来た男性の履いてきた靴が「ーえ?腐乱死体?」てくらいのおぞましさそして禍々しさで、申し訳ないけれど門前払いしてしまいました。

その件で軽いトラウマを抱えて以来、また、あんな不潔な人が来たらどうしよう!という恐怖心から、トイレのトラブルも、家具の設置も、全て自力でやりきってます。

 

女ってのは、いくつになっても、不潔な男性が本当に無理なんです。

しかし、平素から不潔であることにすっかり慣れてしまってる男性には、赤の他人が日々大切に手入れをして守り続けてる世界に入ってゆく、っていう際に、遠慮したり配慮をしたりする、という意識がないんですよね。もうね、ほぼゴキブリですわ(言い過ぎ)。

 

さて、近々、そんな我が部屋に、不潔な男性(推定)が来ることとなりました。

マンション丸ごとPCの設定変更をしなければならなくなって、各部屋で小一時間ほどの工事をするそうなんですよね。

 

こういうとき、どうするか?

 

もうね、敵(?)に弱点を晒すしか、ないと思うんです。

 

もう、10段階でいったら6ぐらいの潔癖の癖を、20ぐらいの大げささで伝えて「不潔な男性はムリです」と、NGを思い切って出してみました。

 

で、どうなったか?

 

おじさんが来ることは確定だそうです。

ただ、靴下は履き替え、手袋・マスクを装着して、新品のスリッパまで持参したおじさんです。

 

もう、ほぼ、ふなっしーです。清潔のいう名の着ぐるみを着たおじさんです。

 

ーうん、だったら大丈夫だと思う。

「では、それでよろしくお願いします」と切った電話口で、私は、小さくガッツポーズをしました。

10年間という年月は、確実に、一人暮らしの女のハートを強くしてくれたのでした。

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クジ運

私の両親。決して悪い人たちではないのだけれど、常に、自分の置かれた境遇がいかにひどいかを周りに少しでも同情してほしくて、誰に対しても口を開けば不平と不満を表す言葉ばかり溢れてくる。

私が今、無職となったことを、長い間、彼らに黙っていたのはそのせいで、メンタルクリニックに通院していることなんて、多分、一生言えずに過ごすと思う。

私が背負っている重荷を肩代わりしてくれとは言わないけれど、「私たちには何もしてやれない。つか、むしろ聞いて!多分、こっちの方がずっと大変なんだよ!!」と、さらに重石を載せてくるような仕打ちは、本当、しないで欲しかった。

ま、私は昔からクジ運も悪かったからな、って諦めている節もあるけれど、それでも、たまには私も、その存在を思い出すと胸に灯りがともるような、そんな親がほしかったな、て、ため息を付くときが、あるよ。

 

先日、父と一緒に従妹の結婚式に出た。

従妹が読んだ、父への感謝の手紙の中で、『当時も、世の中は就職難でした。そんな中、ようやく仕事に就けたのにそこが辛い職場で、誰にも言えずに悩む日々が続いていたある日、お父さんは、私に何も聞かずに「辛いことがあったら仕事なんていつでも辞めて帰ってこい。お前一人の一生くらい、お父さんが養っていけるから」と言ってくれましたね』という下りがあって、私はそこでぽろぽろと泣いてしまった。

 

手紙の内容に感動したからではなく、それを私の隣で一緒に聞いていた父が、あまりに不憫だったから。

娘から頼られるどころか、ああ、本当に、かわいそうな人だなあ、としか思われない父親になっている、ってどんな気分なんだろう?と思うと、不憫で、不憫で。

 

今回は、オチなんてないです、そういう、クジ運の悪さの話でした。

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いつかの青空

「あんな場所に、もう二度と戻らなくて良いんです」二人はそう、口を揃えて言った。

 

パワハラ上司の、陰湿ないじめや八つ当たりに、10年間耐えてきた。

 

そうした日々の中で少しずつ麻痺していった心は静かに限界を迎えつつあり、ある日、パリン、と砕けてしまった。

 

「・・・じゃあ、死のうか」の代わりに、元来、能天気な私は、ささやかな貯金を手に「・・・じゃあ、沖縄に行こうか」と呟いた。

 

初めて訪れた沖縄の、見上げると眩しくて数秒と目がもたない青空や、天青石やサファイアを溶かしこんだような蒼色をした海や、暗い考えの追い付かない暑さと人々の明るさ。

 

そして、何より、ずっと変わらずに側にいてくれた友人の存在。

 

人は生きている限り、何度でもやり直しがきくことを、忘れがちになる。

だから一つでも下手をうったら「死ぬ」以外のコマンドが思い浮かばなくなる。

 

死ななくていい、自分の人生に一つバツを付けるくらいならゼロからやり直さないといけない、なんて思いつめなくていい。

間違えたと思ったら最小限の荷物を持って、その選択が最善でなくても、上向きでなくても、やり直せる場所からとりあえず一歩、歩き出せばいい。

 

「申し訳ございませんが、私は、辞職しようと思っております。だけど、引き継ぎだけはきちんとしたいので、その前に一度、あの職場へ戻ろうと考えております」

 

私がこの半年間で出した答えは、こうだった。前の職場に一旦でも戻ることで自分の症状が悪化しても、これまでの恩義を思ったら、致し方ない、そう、決心した上でのものだ。

 

だけど、面接に来てくれていた派遣元の上司二人の答えは、こうだった。

「休職期間を終えたら申し訳ないですが、一度、退職されて、私たちの新しい店舗ができるまで待っていてください。キャリアはゼロにはなりますが、給与も待遇もなるべく以前通りになるよう調整します。前職場の始末の心配はいりません。本当に、もうなにも心配しなくていいんです。貴女は、あんな場所に、もう二度と戻らなくて良いんです」

 

正社員から派遣社員へ、マイナスからの再スタート。だけど、気分はとても楽になった。

「また一緒に働いてください。だけど、あの場所には二度と戻らなくていい。件のパワハラ上司には、もう、近づけさせません」

そう、はっきりと断言してくれた派遣元の上司たちの言葉を、今は頼りにしていこうと思う。

 

 

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面接室を出て、見上げた初冬の空は重く曇っていたが、私の目は、その雲の隙間から小さく覗く、無垢な青空を見つめている。

 

 

 

 

柘榴のように燃える夕焼け

去年の今頃、生まれて初めて飼ったペットであるジャンガリアンハムスターが死んだ。

その子は、半年ほど前から腹に腫瘍ができていて、病院へ連れていくと、手術をして寿命を縮める可能性の方が高い、と診断を受けた。

私はケージの中から私を見上げるハムスターに「最後の最後まで、一緒に、楽しく過ごそうね」と、笑顔で話しかけた。

 

ハムスターが亡くなる日の朝、通勤前に、主食と別におやつをやり、水と砂を替えた後、いつものように、人差し指の裏でそっと額を撫でると「キイッ!」と、初めて苦しそうな鳴き声をあげた。

私は、慌てて手を引っ込め、改めて彼の様子を観察する。そして、もう、長くはないのだ、と気付いた。

「苦しいだろうから、私が帰るまで待っていなくて、良いよ?私は、大丈夫だから。一人で、大丈夫だから、ね?ありがとう。君がいてくれたから、毎日、本当に楽しかった。ありがとう・・・ずっと、ずっと大好きだよ」

 

仕事終わり、あの子はもう死んでいるだろう、そう確信しながら秋の終わりの夜道を、私は迷子のような顔をして、とぼとぼと、わざと遠回りをして帰った。

部屋に着いて、コートを脱ぎながらケージを覗き込んで、わかっていたのに、私は床に倒れ込んだ。

「ごめん・・・ごめんね・・・嘘だよ、無理・・・行かないで・・・どこにも行かないで!!帰ってきて!!帰ってきてお願い!!」

たくさん泣いて、食事もしばらくできなくて、ようやく口にした水分もすぐに戻した。本当に、毎晩、泣いていた。

仕事中も、赤ちゃんを見ては柔らかい肌触りを思い出し、ほのかに灯る電球を見上げてはあの子のようだと思い、トイレで隠れて泣いていた。

 

そんな、霧の中を手探りしながら進むような日々の中でハムスターの四十九日法要を終え、私は、一人、喪服のままペット霊園から海浜公園まで歩いた。

公園は、家族連れやペットを散歩させつつ楽しげに会話をする人たちの、明るい笑い声に溢れていた。

彼らの間を、私はやっぱり一人で遠くをぼんやり眺めながら歩き続けた。

 

やがて、行き止まりである、民家と駐車場に挟まれた、小さな砂浜へと辿り着いた。

見上げた空は柘榴のような色をして燃えていたが、かえって冷たい印象を受け、私は溜息をつくと、小さく独り言を呟いた。

 

「ねえ?こんな季節に、死ぬもんじゃないよ?」

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明るくてきれいなもの

父は今朝、買い物がてら私の顔でも見ようと私の職場へ行き、そこでついに、私が長期休職してることを知ってしまったそうだ。

お互い、便りのないのは良い便り、とばかりに連絡を取り合わない母から電話がかかってきて、「あんた、ずっと仕事、行ってないんだって?」と、もしもし、も言わない内から切り出された。

 

突然だが私の家は貧しい。下の中、といったところだ。

私が自立して一人暮らしを始めるときに、真っ直ぐな眼差しで父から言われたことはこれだけだ。

 

「お父さんは、お前になにもしてやれることはないから。頑張りなさい」

 

わかってる。だから、一人立ちしてから今までずっと、誰にも頼らずに一人で頑張ってきたのだ。

 

「大丈夫。借金もしてないし、手当もあるから。仕事も探すし、一人で頑張るから、何もしなくていい。迷惑かけるようなことは一切しないから、だから、心配もしないで。母さんたちには遠くで健康でいてくれれば、それでいいから」

電話を受けている間、私はそれらの言葉を、オウムのように繰り返した。

クソ上司のことと病気のことを言ったら、余計に心配するだろうから、そこは伏せたくて、そうすると、こうしか言いようがなかったのだ。

 

母は「気付いてあげなくてごめん、知ったのに、何もしてあげられなくてごめん」と、泣いていた。

 

・・・だから、連絡しなかったのにな。

 

田舎住まいで、地位も財力も知性も持ち合わせてはいない私の両親に連絡しても、何の助けにはならないから。私の側で、ただ、おろおろして、おいおい泣いて、「どうすんの?これからどうすんのあんた?」って、追い詰められるだけだから、さ。

 

蒼空をすうっと伸びてゆく飛行機雲とか、楽しそうな笑い声がする民家の軒先で咲く花とか、そういう、明るくてきれいなものばかり、にこにこと見つめて生きていきたかったんだけど、やっぱり、人生って苦しいね。

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